「一般の人で体重×1g、トレーニングをしていると体重×2~3gのたんぱく質を摂るべき」
トレーニングをしていると、このようなことを聞いたり読んだりすることが多いと思います。
しかし、実際に体重×2gのたんぱく質を摂ろうとすると大変です。
本当にこんなにも大量のたんぱく質が必要なのでしょうか?
たんぱく質の大量摂取が逆効果になることも
たんぱく質の摂取量が多いと腸内環境に対して、悪影響を及ぼす可能性が高いです。
また、若くて健康な人だと大丈夫ですが、腎臓に対しての負担も懸念されるでしょう。
これらの悪影響は筋肉の発達には一見、関係なく思えます。
しかし、間接的に筋肉の発達に悪影響を及ぼすこともあるのです。
腸内環境が与える筋肉への影響
腸内細菌は大きく善玉菌、日和見菌、悪玉菌に分けられます。
それぞれの善玉菌:日和見菌:悪玉菌=2:7:1の割合が理想のバランスと言われています。
当然ですが、腸内細菌も食べ物を食べて代謝を行います。
そして、これらの菌はそれぞれ好んで食べるものが違っており、善玉菌は糖質や食物繊維などの炭水化物を好み、悪玉菌は脂質やたんぱく質を好みます。
つまり、たんぱく質だけを過剰に摂取していると悪玉菌の割合が増えることにつながるのです。
また、たんぱく質を沢山摂るためにプロテインなどのサプリメントや手軽にたんぱく質が摂れる加工食品を摂る人も多いですが、これらの食品には多くの場合、多量の添加物が含まれます。これらの添加物にも腸内環境に対して悪影響を及ぼすものも少なくありません。
悪玉菌が増えると腸内に炎症が起こり、アレルギーや花粉症などの免疫系に悪い影響を与えてしまいます。
そして、腸内の炎症が進んでしまうと、トレーニングによって発生した筋肉や神経の炎症を回復させることを妨げてしまう可能性もあるのです。
腎臓への負担が与える筋肉への影響
腎臓は血液をろ過し、血液の状態を正常に保つ働きをしています。
この腎臓には毛細血管が細かい網の目のように張り巡らされており、この網の目から血液中の老廃物や過剰なナトリウムなどを濾し出しています。
しかし、長期的にたんぱく質を過剰に摂ることで網の目が詰まることがあります。
腎臓の網の目が詰まってしまうと、正常にろ過が出来なくなるので血液が老廃物で汚れてしまいます。血液が汚れることで血管に炎症が起こり、筋肉合成を含んだ様々な代謝を阻害してしまいます。
更に、腎臓の状態が悪くなり何らかの病気になればたんぱく質を制限した食事を強制され、もっと悪化すると人工透析などを行わなければならずトレーニングどころではなくなってしまいます。
単純にたんぱく質の過剰摂取だけが原因ではありませんが、過剰なたんぱく質は少なくとも腎臓に負担をかける行為になるのです。
低たんぱく質でも筋肉は発達するのか?
たんぱく質の過剰摂取が身体に悪影響を与えることはわかりました。
しかし、たんぱく質の摂取量が少ない状態での筋肉の発達は可能なのでしょうか?
結論としては体質や除脂肪体重指標(FFMI)によって変わります。
体質による違い
体質には遺伝的要因や環境的要因がありますが、もっとも重要なのは腸内環境です。
腸内環境は腸内細菌の組成によって決まりますが、これには遺伝的要因と環境的要因があります。
例えば、もともと狩猟民族であったアフリカ人と農耕民族である日本人では身体に適応しやすい腸内細菌は違いますが、これは遺伝的要因です。
一方、乳児期に母乳で育てられたか粉ミルクで育てられたか、パン食か米食か、肉が好きか魚が好きかなどの食環境や、ストレス耐性などは環境的要因によっても大きくく変わります。
少なくとも日本人は古来より米や魚、野菜を食事の中心に置いていたので、これらの食品が適応すると考えられます。
つまり、日本人は元々たんぱく質の摂取量が少ない人種であり、過剰な摂取には向いていないと言えるでしょう。
除脂肪体重指標(FFMI)による違い
体重から体脂肪量を引いたものを除脂肪体重(LBM)と呼びます。
更に、除脂肪体重を身長の二乗で割ったものを除脂肪体重指標(FFMI)と呼び、この指標でたんぱく質の必要量は大きく変わります。
※除脂肪体重指標(FFMI)の計算は下記のページで簡単に行えます。
引用元:自動計算
除脂肪体重指標が22.5を超えるアスリートレベルであれば、筋肉を維持するためには相応のたんぱく質が必要であると考えられます。
しかし、この指標以下であれば「除脂肪体重×1g」程度の摂取量でも十分に達成、維持が可能でしょう。
※ちなみに筆者の除脂肪体重指標は21.1程ですが、上記のたんぱく質量前後で維持ができています。
低たんぱく質で最大の効果を得るには
ここまで読んでいただき、過剰なたんぱく質摂取の弊害と低たんぱく質でも筋発達が可能なのかが分かっていただけたかと思います。
しかし、どちらにせよ少ないたんぱく質の摂取で最大限の効果を得るに越したことはありません。
最後に低たんぱく質でも筋肉の発達に最大限の効果を得るための方法をお伝えします。
アミノ酸スコアを意識する
たんぱく質はアミノ酸がいくつもつながってできています。
このアミノ酸には体内で作ることができない9種類の必須アミノ酸と、体内で作ることができる11種類の非必須アミノ酸とに分けられます。
アミノ酸スコアは必須アミノ酸のバランスを点数にしたもので、それぞれの食品に与えられています。このスコアが高いと「体内での利用効率が高い」ということになります。
例えば、肉・魚・卵・乳製品・大豆製品などの代表的なたんぱく質食品のアミノ酸スコアは100で、体内での利用効率は最大です。
一方、穀類や野菜などは低く、日本人の主食である白米は93と100には届きません。
白米には必須アミノ酸であるリジンが少なく、そのせいでアミノ酸スコアが100に届かないのです。
しかし、白米に不足しているリジンを補う食品を一緒に摂ることで、アミノ酸スコアを100にすることができるのです。
リジンが多く含まれている食品には魚介類や大豆製品があげられます。
ここで思い出して欲しいのが日本食です。日本は四方が海に面した土地であり魚介類が手に入りやすい環境です。
さらに、ご飯と豆腐の味噌汁といった定番の組み合わせもアミノ酸スコアを100にすることができます。
江戸時代の日本人は1日に5合もご飯を食べていたと言われています。白米には1合あたり8.5gのたんぱく質が含まれているので、江戸時代の日本人にはご飯も立派なたんぱく質源だったのです。
炭水化物をしっかりと摂る
トレーニングをしている人が極端に多いたんぱく質を摂取する理由の一つに、「筋肉の分解を防ぐ」があります。
1日に消費するエネルギーよりも摂取するエネルギーが低く、糖質などのエネルギーが足りない状態だと、筋肉を分解することでたんぱく質をエネルギーとして使います。
そこで、「筋肉の分解を防ぐために余分にたんぱく質を摂ろう」という考えになるのですが、そもそも糖質をしっかりと摂り、エネルギーに満ちた状態にしていれば筋肉が分解することもありません。
わざわざ腸内環境や腎臓に悪影響を与えるたんぱく質をエネルギーとして大量に摂らなくても、腸内の善玉菌のエサにもなる糖質からエネルギーを摂ることで、筋肉の分解を防ぎ、腸内環境を良くすることができるのです。
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